在宅ワーカーのための簡単エクササイズ|デスクワーク中の肩こり・腰痛対策
コロナ禍を経て在宅ワークが定着し、2025年現在では多くの企業がハイブリッドワークを標準としています。一方で、長時間のデスクワークによる健康問題も深刻化しています。特に肩こりや腰痛、目の疲れ、姿勢の悪化などの問題は、在宅ワーカーにとって大きな課題となっています。日本整形外科学会の調査によれば、在宅ワーク増加後に腰痛を訴える人は約1.5倍に増加したというデータもあります。本記事では、デスクワーク中でも簡単に実践できるエクササイズと、長時間のパソコン作業による体の不調を防ぐための効果的な対策を紹介します。忙しい仕事の合間にも取り入れられる方法ばかりですので、ぜひ日常に取り入れてみてください。
長時間のデスクワークで起こる体の問題
※これらの問題は互いに関連しており、一つの問題が他の問題を悪化させる悪循環を生み出します
1. 肩こり・首こり解消エクササイズ
長時間のパソコン作業では、知らず知らずのうちに肩が緊張し、首が前に出た姿勢になりがちです。頭の重さ(約4〜6kg)が首や肩に負担をかけ、こりや痛みを引き起こします。以下のエクササイズは、肩と首の緊張をほぐし、血行を促進するのに効果的です。
肩回しエクササイズ
実施方法:
- 背筋を伸ばして座り、両手を肩に置きます
- 両肘で大きな円を描くように、前回しを10回行います
- 同様に後ろ回しを10回行います
- 肩の力を抜いて、深呼吸しながら行うのがポイントです
効果: 肩周りの血行促進、肩関節の可動域改善
頻度: 1時間ごとに1セット
首ストレッチ
実施方法:
- 背筋を伸ばして座り、リラックスした状態で始めます
- 右耳を右肩に近づけるように、頭を右に傾けます(肩は上げない)
- 15〜30秒キープし、ゆっくり元の位置に戻します
- 左側も同様に行います
- 次に、あごを引いて胸に近づけるようにし、15〜30秒キープします
- 最後に、天井を見上げるように頭を後ろに傾け、15〜30秒キープします
効果: 首の筋肉の緊張緩和、首の可動域改善
頻度: 2時間ごとに1セット
胸を開くストレッチ
実施方法:
- 椅子に座り、背中を床と垂直にします
- 両手を頭の後ろで組みます
- 肘を後ろに引き、胸を開くように意識します
- 15〜20秒キープし、ゆっくり元の位置に戻します
- これを3回繰り返します
効果: 胸の筋肉のストレッチ、猫背予防、肩甲骨周りの柔軟性向上
頻度: 3時間ごとに1セット
専門家からのアドバイス
「肩こりの多くは、血行不良と筋肉の緊張が原因です。エクササイズだけでなく、定期的に水分補給をし、適切な姿勢を意識することも重要です。また、痛みを伴うストレッチは避け、心地よい伸びを感じる程度にとどめましょう。」
— 理学療法士 山田健太郎
2. 腰痛予防・改善エクササイズ
長時間座ることは腰への負担が大きく、特に不適切な姿勢やサポートの不足した椅子を使用している場合は腰痛のリスクが高まります。また、動きが少ないと腰部の筋肉が弱まり、さらに問題を悪化させる可能性があります。以下のエクササイズは、腰の筋肉を強化し、柔軟性を高めるのに役立ちます。
骨盤前後傾エクササイズ
実施方法:
- 椅子に浅めに座り、足を床にしっかりつけます
- 骨盤を前に傾け、腰を反らせ背筋を伸ばします(前傾)
- 次に骨盤を後ろに傾け、腰を丸めます(後傾)
- このように前傾と後傾を交互に10回繰り返します
- 動作はゆっくりと、呼吸と合わせて行います
効果: 腰部の柔軟性向上、腰周りの筋肉の緊張緩和
頻度: 1時間ごとに1セット
椅子での腰ひねりストレッチ
実施方法:
- 椅子に座り、背筋を伸ばします
- 両手を胸の前でクロスさせるか、椅子の背もたれを持ちます
- 上半身をゆっくりと右側に回転させます
- 15〜20秒キープし、ゆっくり元の位置に戻します
- 左側も同様に行います
- 各側3回ずつ繰り返します
効果: 腰部の柔軟性向上、背中の筋肉のストレッチ
頻度: 2時間ごとに1セット
立ち上がりスクワット
実施方法:
- 椅子の前に立ち、足を肩幅に開きます
- ゆっくりと椅子に座るような動作をします(完全に座らない)
- 椅子に軽く触れたら、すぐに立ち上がります
- このスクワット動作を5〜10回繰り返します
- 動作中は背筋を伸ばし、膝がつま先より前に出ないよう注意します
効果: 下半身と体幹の筋力強化、血行促進
頻度: 2〜3時間ごとに1セット
腰痛予防のための姿勢チェックポイント
座高の調整: 足が床にしっかりつき、膝が90度に曲がる高さに調整
背もたれの活用: 背中全体が背もたれに接触するように座る
腰のサポート: クッションなどで腰椎の自然なカーブをサポート
定期的な立ち上がり: 30〜45分ごとに立ち上がり、簡単に体を動かす
3. 目の疲れ軽減エクササイズ
パソコン作業による目の疲れ(ドライアイ、かすみ目、目の痛みなど)は、在宅ワーカーの多くが経験する問題です。ブルーライトの影響や長時間同じ距離を見続けることによる筋肉疲労が主な原因です。以下のエクササイズは、目の疲れを軽減し、視力の低下を予防するのに効果的です。
20-20-20ルール
実施方法:
- 20分ごとに
- 20フィート(約6メートル)以上離れたものを
- 20秒間見つめます
- 遠くの窓の外や部屋の対角線上の物などを見るとよいでしょう
効果: 目の焦点調節筋のリラックス、ドライアイ予防
頻度: 20分ごと
パームアイング(手のひらあて)
実施方法:
- 手をこすり合わせて温めます
- 両手の手のひらで、目を覆います(光が入らないように)
- 目を閉じ、深呼吸しながら1〜2分キープします
- 手を離し、ゆっくりと目を開けます
効果: 目の筋肉の緊張緩和、リラクゼーション効果
頻度: 1時間ごと、または目が特に疲れたと感じる時
眼球運動エクササイズ
実施方法:
- 背筋を伸ばして座り、顔はまっすぐ前を向けます
- 目だけを使って、上、右、下、左と時計回りに動かします
- 各方向で1秒ほど止め、5回繰り返します
- 次に反時計回りに同様に5回行います
- 最後に、遠くを見てから近くを見る動作を5回繰り返します
効果: 眼筋のトレーニング、血行促進
頻度: 2時間ごとに1セット
目の健康をサポートする環境設定
ディスプレイ設定
- 画面の明るさを周囲の環境に合わせて調整
- ブルーライトフィルターの使用(物理的なものまたはソフトウェア)
- 文字サイズを適切に大きくする
- 画面から40〜60cmの距離を確保
- 目線より少し下(約15〜20度)に画面を配置
作業環境の整備
- 十分な自然光または間接照明を確保
- 定期的な瞬きを意識する(通常の3倍程度)
- 適度な湿度(40〜60%)を維持
- 定期的な水分補給
- 必要に応じて人工涙液の使用
4. 手首・指のケアエクササイズ
長時間のキーボード操作やマウス使用は、手首や指に負担をかけ、腱鞘炎や手根管症候群などの原因になることがあります。これらの問題を予防するために、以下のエクササイズを日常的に取り入れましょう。
手首ストレッチ
実施方法:
- 右腕を前に伸ばし、手のひらを前に向けます
- 左手で右手の指を軽く後ろに引き、手首を伸ばします
- 15秒キープし、ゆっくり戻します
- 次に手のひらを下に向け、同様にストレッチします
- 左腕も同様に行います
効果: 手首の柔軟性向上、腱の緊張緩和
頻度: 1時間ごとに1セット
グーパー運動
実施方法:
- 両手を前に出し、強く握りこぶしを作ります(グー)
- 3秒間キープした後、一気に指を広げます(パー)
- 指を伸ばした状態で3秒間キープします
- この動作を10回繰り返します
効果: 指の筋肉と腱のストレッチ、血行促進
頻度: 1時間ごとに1セット
指回しマッサージ
実施方法:
- 左手の親指と人差し指で、右手の親指の付け根をつまみます
- 円を描くように、優しくマッサージします
- 残りの指も一本ずつ同様にマッサージします
- 左手の指も同様にマッサージします
効果: 指の関節の緊張緩和、血行促進
頻度: 2時間ごとに1セット
手根管症候群の予防ポイント
注意すべき症状
- 手や指のしびれ・痛み(特に夜間)
- 親指、人差し指、中指のしびれ
- 握力の低下
- 細かい作業が困難になる
予防策
- キーボードとマウスは手首が自然な位置になるよう配置
- リストレストの活用(ただし常時圧迫しないよう注意)
- エルゴノミクスキーボードの使用
- 作業の合間に定期的な休憩とストレッチ
- 症状が続く場合は早めに専門医に相談
5. 全身の血行促進エクササイズ
長時間座り続けることによる血行不良は、むくみやだるさの原因となり、最悪の場合は深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)のリスクも高めます。以下のエクササイズは、全身の血行を促進し、これらのリスクを軽減するのに役立ちます。
デスクでのマーチング
実施方法:
- 椅子に浅めに座り、背筋を伸ばします
- 右膝を胸に向かって持ち上げ、1秒キープします
- 右足を下ろし、左膝を同様に持ち上げます
- この動作を交互に20〜30回繰り返します
- 速度は徐々に上げていくと、より効果的です
効果: 下半身の血行促進、大腿部の筋肉活性化
頻度: 1時間ごとに1セット
足首回し
実施方法:
- 椅子に座り、右足を少し持ち上げます
- 足首を時計回りに10回回します
- 次に反時計回りに10回回します
- 左足も同様に行います
効果: 足首の柔軟性向上、下肢の血行促進
頻度: 30分ごとに1セット
かかと上げ
実施方法:
- 椅子に座るか、立った状態で行います
- 両足のかかとを同時に持ち上げ、つま先立ちの状態にします
- 3秒間キープした後、ゆっくりとかかとを下ろします
- この動作を15〜20回繰り返します
効果: ふくらはぎの筋肉活性化、静脈血流の促進
頻度: 1時間ごとに1セット
1日5分の簡単全身エクササイズルーティン
以下のルーティンは、短い昼休みや作業の合間に行うことで、全身の血行を促進し、エネルギーレベルを回復させるのに役立ちます。一連の動作を通して行うことで、より効果的です。
- 軽いジョギング(その場で)
30秒間 - 腕回し(前回し・後ろ回し)
各10回 - 体側伸ばし(左右)
各5回 - スクワット(浅め)
10回 - 胸を開くストレッチ
15秒×2回 - 首回し(ゆっくりと)
各方向3回 - 深呼吸
5回
※動きはゆっくりと、呼吸を意識しながら行いましょう。無理をせず、体調に合わせて回数や動作を調整してください。
健康的な在宅ワーク環境の作り方
エクササイズと合わせて、適切な作業環境を整えることも、体の不調を予防するために非常に重要です。以下のポイントを参考に、あなたの在宅ワークスペースを見直してみましょう。
エルゴノミクスに基づいた理想的なワークステーション
モニター位置
- 目線から15〜20度下
- モニターとの距離は40〜70cm
- 画面の上端が目の高さかやや下
キーボードとマウス
- 肘が90度になる高さ
- 肩の力が抜ける位置
- リストレストの活用
椅子の調整
- 足が床につく高さ
- 膝が90度に曲がる
- 腰椎サポートクッションの活用
理想的な姿勢
- 背筋を自然に伸ばす
- 肩の力を抜く
- 顎を引き気味に
※長時間同じ姿勢を維持せず、30〜45分ごとに姿勢を変えたり、立ち上がったりすることも重要です
おすすめの ergonomic 製品
人間工学に基づいた椅子
- 腰椎サポート機能
- 高さ・角度の調整機能
- 適切なクッション性
¥20,000〜¥50,000
モニタースタンド
- 高さ調整可能
- 視線が自然に保てる
- デスクスペースの確保
¥3,000〜¥8,000
エルゴノミクスキーボード
- 手首の自然な角度をサポート
- キーの押下圧が適切
- 分割型・角度調整型
¥8,000〜¥20,000
腰痛対策クッション
- 腰椎の自然なカーブをサポート
- 低反発素材使用
- 調整可能なストラップ付き
¥3,000〜¥7,000
※価格はおおよその目安です。製品の選択は個人の体型や作業スタイルに合わせて行うことをおすすめします。
在宅ワークに最適!一日のエクササイズスケジュール例
ここまで紹介したエクササイズを効果的に日常に取り入れるための、具体的なスケジュール例をご紹介します。これらは一例ですので、ご自身の仕事スタイルや体調に合わせてアレンジしてみてください。
時間帯 | 活動内容 | 実施するエクササイズ | 所要時間 |
---|---|---|---|
始業前 (8:30-9:00) |
朝のエネルギーチャージ |
|
10〜15分 |
午前中 (30分ごと) |
短時間リフレッシュ |
|
1〜2分 |
午前中 (1時間ごと) |
姿勢リセット |
|
3〜5分 |
昼休み (12:00-13:00) |
活動的な休憩 |
|
15〜20分 |
午後 (30分ごと) |
集中力回復 |
|
1〜2分 |
午後 (1時間ごと) |
エネルギー補給 |
|
3〜5分 |
終業後 (17:30-18:00) |
リセット&リラックス |
|
10〜15分 |
効果的な実践のためのポイント
アラームを活用
30分または1時間ごとにアラームをセットし、エクササイズのリマインダーにする
習慣化を意識
「コーヒーを入れたら手首ストレッチ」など、既存の行動と新しいエクササイズを紐付ける
仲間を作る
同僚や家族と一緒に実践したり、オンラインコミュニティで共有したりして、モチベーションを維持
少しずつ増やす
最初は1〜2種類のエクササイズから始め、徐々に種類や回数を増やしていく
在宅ワークでの体調管理に関するQ&A
Q1: エクササイズを行う最適なタイミングはありますか?
A: エクササイズを行う理想的なタイミングは以下の通りです:
- 目のエクササイズ: 20分ごと(20-20-20ルール)
- 手首・指のケア: 30分〜1時間ごと
- 肩こり・首こり対策: 1時間ごと
- 腰痛予防: 30〜45分ごとに姿勢を変える、1〜2時間ごとにストレッチ
- 血行促進: 最低でも1時間に1回は立ち上がる
ただし、これはあくまで目安です。集中力が切れたとき、体の違和感を感じたとき、会議の合間など、自分のリズムに合わせて取り入れることが大切です。
Q2: 自宅での作業環境を改善するための低コストな方法はありますか?
A: 高価な人間工学製品がなくても、以下の方法で作業環境を改善できます:
- モニターの高さ調整: 本や箱を重ねてモニタースタンドの代わりにする
- 腰椎サポート: 小さめのタオルを丸めて腰の部分に置く
- 足台: 低めの箱やスツールを活用して足を支える
- キーボード位置: 薄い本や折りたたんだタオルをリストレストとして使用
- 照明: 窓からの自然光を活用し、必要に応じて追加の照明を配置
- 姿勢チェック: 無料のスマートフォンアプリで定期的に姿勢をチェック
最も重要なのは、長時間同じ姿勢を維持しないことです。定期的に姿勢を変え、立ち上がることを習慣化しましょう。
Q3: 既に肩こりや腰痛がひどい場合はどうすればよいですか?
A: 症状が既に出ている場合は、以下のステップで対応することをお勧めします:
- 専門家への相談: 症状が強い、または長期間続いている場合は、医師や理学療法士などの専門家に相談することが最優先です
- 温熱療法: 肩こりには温かいタオルやカイロを使用して血行を促進させる
- 冷却療法: 急性の腰痛の場合は、最初の24〜48時間は氷嚢などで冷やす
- 段階的なエクササイズ: 痛みを悪化させないよう、軽めのストレッチから始め、徐々に強度を上げる
- 休息と姿勢の改善: 悪化要因となる姿勢や活動を特定し、改善する
- 代替作業姿勢: 立ち仕事とデスクワークを交互に行うなど、作業姿勢に変化をつける
痛みがある状態でのエクササイズは、痛みを悪化させる可能性があります。無理をせず、痛みが和らいでから徐々に活動レベルを上げていくことが大切です。
Q4: 在宅ワーク中のエクササイズを忘れがちです。継続するコツはありますか?
A: エクササイズを習慣化するためのコツは以下の通りです:
- 視覚的リマインダー: デスク周りにストレッチの図や注意書きを貼る
- デジタルリマインダー: アプリやブラウザ拡張機能を使用して定期的に通知を受ける
- ルーティン化: 特定の作業(メールチェック、会議前後など)と紐づけて実施する
- 小さな目標設定: 「1日5回の深呼吸」など、達成しやすい小さな目標から始める
- 習慣トラッキング: カレンダーやアプリでエクササイズの実施を記録し、達成感を得る
- 環境設計: エクササイズに必要なものをすぐ手に取れる場所に置いておく
- 同僚と共有: オンライン会議の開始前に全員で簡単なストレッチを行うなど、チームで取り組む
最も効果的なのは、日常的な行動や既存の習慣と新しいエクササイズを結びつけることです。例えば「コーヒーを入れるたびに足首回しをする」などの連携を作ることで、自然と習慣化しやすくなります。
まとめ:健康的な在宅ワークライフを実現するために
在宅ワークは、通勤時間の削減や柔軟な働き方など多くのメリットがある一方で、適切なケアを怠ると体の不調を招く可能性があります。本記事で紹介したエクササイズと環境整備のポイントを日常に取り入れることで、デスクワークによる体への負担を軽減し、健康的に働き続けることができます。
最も重要なのは、「長時間同じ姿勢を続けない」という原則です。どんなに理想的な姿勢や環境であっても、動きのない状態が続くことは体に負担をかけます。定期的に姿勢を変え、短時間でも良いのでエクササイズを取り入れる習慣をつけましょう。
また、体の不調を感じたら無理をせず、早めに対処することも大切です。予防と早期対応によって、長期的な健康問題に発展するリスクを減らすことができます。在宅ワークを長く続けるためにも、自分の体と向き合い、適切なケアを行っていきましょう。
健康的な在宅ワークをサポートします
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